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第五章 Gloom 07
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第五章 Gloom 07




心はまだ震えていて。

でもあの光に会いたくて。




 真っ白い空間で、光が瞬いた。
 小さく点滅するそれは、まるで瞬きをしているようだった。
 
「……起きた?」
『――うん』
「おはよう」
『……おはよ』
 
 人型が手の中の光を空間へ浮かべた。光はそのまま空中を漂うようにふわふわと揺れている。
 
「ゆっくり休めた?」
『多分……』
「そっか。良かった」
『……うん』
 
――くるり。
 人型が回る。重力を感じさせないように、くるくると。
 
「〝皆〟が頑張って動いてくれてるよ」
『え……?』
「誰のため、だろうね?」
『そんなの……』
「……分からない?」
『……期待しちゃ……駄目だ……』
「……そう?」
『皆は……皆の考えが、あって……』
「ふうん?」
 
――また、くるり。
 人型が光の方に向かって回転した。手で優しく撫でるように光を包む。
 
「じゃあ、どうして〝あの人〟は来てくれたのかな」
『〝あの人〟……?』
「呼ばない?」
『何を?』
「心が、呼ばない?」
『心が……?』
「そう。心」
 
 人型が何もない空間へ手を伸ばす。
 指先がゆるい円を描くと、周囲に小さな音が響いた。
 
――……リィン……――
 
『あ……』
「この音が、心の音」
『うん……〝分かる〟』
「よく聞いて?」
 
――……リィ……ン……――
 
『誰かを――呼んでる?』
「それが誰だか、分かる?」
『……ううん』
「……そう。まだ、癒えてないんだね」
 
 光がゆっくりと空間を漂う。音の音源を探すように。
 
『……何だろう。あそこへ行きたい、かも……』
「行ってみる?」
『ううん……』
「行っておいで?」
『怖いよ……』
「怖かったらまた、ここへ戻って来れば良いから」
『でも……』
「呼んでる、だろ?」
 
――パチン。
 
 人型が指を鳴らすと、途端に何かの音が辺りに響く。
 
――≪……!≫――
 
 それに共鳴するかのように、先程人型が言った〝心の音〟が鳴った。
 
――リィィ……ン――
 
『あ……』
「ほら……、呼んでる」
『じゃあ……ちょっと、だけ……』
「うん。途中まで送ってあげる」
 
 人型が光をそっと手の中に閉じ込めた。そしてそのままゆっくりと浮上を始める。
 頭上から注いで来るのは、光。その向こうにうっすらと見えるのは――紅。
 人型は手の中の光を見て微笑む。
 
「ここからは、あの紅色を目指して行けば良い」
『……うん』
「……〝怖い〟と思ったら、すぐ戻っておいで?」
『……分かった。……行ってみる……』
「……いってらっしゃい」
 
 人型の手から離れた光が、紅色を目指して上昇を始めた。
 人型はそれを見送りながら、ぽつりと呟く。
 
「……駄目だったら、……やっぱり持ってくしかない、かな」



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HN:
ちおり
性別:
女性
自己紹介:
赤毛2人に愛を注ぐ日々。