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第五章 Gloom 外伝 Silica
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第五章 Gloom 外伝 Silica




光を見付けて。

あの人の瞳がそう言っていた。




 めをあけたら、あかいいろがみえました。
 みぎめがあかくて、ひだりめがあおみどり。とても、きれいだとおもいました。
 そのひとは、カルサといいました。
 なまえ、いいなぁ。あたしには、なまえ、ないのかな?

 カルサにつれられて、そとにでた。まっしろなせかい。きれい。きれい!
 うえからふってくるこれ、なんだろう?さわってみたら、とてもつめたかったです。
 びっくりして、てをひっこめたら、そのてをカルサがにぎってくれました。てをにぎったまま、「これは〝ゆき〟というものだ」とカルサがおしえてくれました。
 ゆきかぁ。こんなにつめたいのに、きれい。でも、てはあったかい。
「……私には主がいる。しかしお前には主がいない。主が居らず病弱なお前は生きていくことが難しいだろう」
 あるじって、なんだろう?カルサのだいじなひと?
 カルサのいうことはむずかしくて、よくわからなかったけど。いっしょうけんめい、きいたよ?
「しかし、何故だろう。お前をこのままここに置いておきたくないのだ。やはり同胞故の感情だろうか」
 どうほうってなぁに?
「――ここから逃げろ。誰にも捕まらないように身を隠して行け」
 にげろって?ここから?
 わかんない……。わかんないけど。
 カルサとはなれるのは、いやだよ!いっしょに、いこうよ!
「私はいい。私は主のために生き、死ぬのだから」
 しぬ?しぬってなぁに?
 でも、カルサがそれでいいっていうのなら。……いいのかなぁ?
「だがお前は、何者にも縛られていない。お前は自由だ。自分が行きたいと思うところへ行け。自分が生きたいように生きろ。その過程で死ぬのもまた一興」
 じゆう?いきる?あたしが、おもうように?
 カルサのいうことは、むずかしい……。
「さぁ行け。ここから外に出たら、お前にとって苦難の日々が待っているだろう」
 いけっていわれても、どうしたらいいのかわからないよ。
 でも、カルサがここにいたらあぶないっていうから。はなれろっていうから。そのとおりに、する。
「だが、もしかしたら私のように、〝光〟を見付けることが出来るかもしれない」
〝ひかり〟?あるじっていうひとが、カルサのひかり、なのかな?だったら、あたしにとってカルサがひかり、だよ?
 あたしのてをにぎるては、とてもあたたかいし。あたしをみるそのめは、とても、とてもやさしい。
 でもカルサはくびをふって、「そうじゃない」っていうの。「わたしはちがう」って。
 カルサはひかりじゃないの?じゃあひかりって、だれのこと?

 ほんとうは、はなれたくなかったけど、カルサが「もういけ」っていうから、あるきはじめました。
 なんどもふりかえりながらカルサをみたけれど、どうしても、いっしょにいくことはできないんだって。
 それだけ、あるじってひとがだいじなんだろうな。どんなひと、なのかな?
 でも、カルサがあんなにおもってるひとだから、カルサよりももっとやさしいひと、なんだね。あたしがめをあけたときには、カルサしかみえなかったけど、きっと、あそこにいるんだよね?
 カルサはむずかしいことばかりいったけど、さむいからって、あたたかいふくをきせてくれました。あたしのかみのいろがみえないようにって、ぼうしもきせてくれました。
 カルサは、やさしい。あたしのかみのいろ、こんなへんないろじゃなくて、カルサみたいにまっしろがよかったなぁ。

 いっしょうけんめいあるいていくと、キラキラしてるまちがみえました。
 そこにはたくさんのみずがありました。うみっていうんだって。
 すごいなぁ、おおきいなぁっておもってたら、あたしとおなじ――カルサは『どうほう』っていってた――ひとたちが、へんなのりものにのってたから、あたしもそれにのったよ。
 あたしはそのなかで、みつからないようにかくれていました。カルサが『かくれていけ』っていったから。でも、ちょっとだけたのしかったよ。
 そののりものがとまって、みんながうごきはじめたから、あたしもそれにまぎれてあるいてついていきました。
 どこへいくのかなぁ?
 ころばないように、あしもとをみながらあるいていたら、めのまえになにかがみえてきました。
 うわぁ、すごくたかいたてもの!なんだろう、あれ。
 ぼーっとみてたら、いつのまにかみんないなくなっちゃった。
 どうしよう。さっきからおなかもぐぅぐぅなってる。おなかへったなぁ。あのたかいたてものにいけば、なにかあるかな?

 たてもののなかには、あたしとおなじひとたちがたくさんいてびっくりしました。
 みんなたのしそうだったけど、あたしはなんとなくこわくなって、かくれました。おいしそうなにおいがしたところから、ときどきたべものをもらって。ごめんなさい、っておもいながら。
 でもこのたてものは、おもしろい!いっぱいへやがあって、しらないものばかり。
 まいにちすこしずつたんけんしてたら、きれいなえがかざられているへやがありました。すごくきれいっておもいながらみていたら、あかいいろがたくさんはいっているはこをみつけました。
 そのいろがカルサとおなじいろだったから、すこしだけっておもって、そのはこをもってへやのすみにかくれました。ちょっとせまかったけど、ここならみつからないよね。
 あかいあかいいろ。カルサのいろ。
 きれい、だなぁ。
 なんだか、ねむたくなってきちゃった。そういえば、さいきん、ねてなかった……な――

 たくさんねたあとにめをさますと、めのまえにはうすむらさき。
――……きれい。
 そのひとはすごくやさしいこえで、あたしにはなしかけてくれました。
「はぁい、小さなレィディ? 素敵な髪ね♪」
 びっくりした。
 だってあたしのかみをほめてくれるひとなんて、いままでいなかったから。すてきって、ほめことば、だよね?カルサにだって、そんなこといわれたことない。
 しかもそのあと、そのひとはあたしになまえをつけてくれたの!
 シリカ、だって!
 うわぁ、うれしい!うれしい!!
 そのひとは〝レピド〟っていいました。やさしいのはレピドだけじゃなくて、そこにいたひとたちみんなが、カルサみたいにやさしかったです。

 あったかくて、きれいで、まるでひかってるみたい。これがカルサのいってた〝ひかり〟かもしれない。
――そうだといいな。
 カルサのひかりと、あたしのひかりはちがうかもしれないけど。でも、いいや。
――これが、ここが、あたしの。
 ねぇ、カルサ?
 あたしも、ひかり、みつけたよ?



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赤毛2人に愛を注ぐ日々。