光を見付けて。
あの人の瞳がそう言っていた。
めをあけたら、あかいいろがみえました。
みぎめがあかくて、ひだりめがあおみどり。とても、きれいだとおもいました。
そのひとは、カルサといいました。
なまえ、いいなぁ。あたしには、なまえ、ないのかな?
カルサにつれられて、そとにでた。まっしろなせかい。きれい。きれい!
うえからふってくるこれ、なんだろう?さわってみたら、とてもつめたかったです。
びっくりして、てをひっこめたら、そのてをカルサがにぎってくれました。てをにぎったまま、「これは〝ゆき〟というものだ」とカルサがおしえてくれました。
ゆきかぁ。こんなにつめたいのに、きれい。でも、てはあったかい。
「……私には主がいる。しかしお前には主がいない。主が居らず病弱なお前は生きていくことが難しいだろう」
あるじって、なんだろう?カルサのだいじなひと?
カルサのいうことはむずかしくて、よくわからなかったけど。いっしょうけんめい、きいたよ?
「しかし、何故だろう。お前をこのままここに置いておきたくないのだ。やはり同胞故の感情だろうか」
どうほうってなぁに?
「――ここから逃げろ。誰にも捕まらないように身を隠して行け」
にげろって?ここから?
わかんない……。わかんないけど。
カルサとはなれるのは、いやだよ!いっしょに、いこうよ!
「私はいい。私は主のために生き、死ぬのだから」
しぬ?しぬってなぁに?
でも、カルサがそれでいいっていうのなら。……いいのかなぁ?
「だがお前は、何者にも縛られていない。お前は自由だ。自分が行きたいと思うところへ行け。自分が生きたいように生きろ。その過程で死ぬのもまた一興」
じゆう?いきる?あたしが、おもうように?
カルサのいうことは、むずかしい……。
「さぁ行け。ここから外に出たら、お前にとって苦難の日々が待っているだろう」
いけっていわれても、どうしたらいいのかわからないよ。
でも、カルサがここにいたらあぶないっていうから。はなれろっていうから。そのとおりに、する。
「だが、もしかしたら私のように、〝光〟を見付けることが出来るかもしれない」
〝ひかり〟?あるじっていうひとが、カルサのひかり、なのかな?だったら、あたしにとってカルサがひかり、だよ?
あたしのてをにぎるては、とてもあたたかいし。あたしをみるそのめは、とても、とてもやさしい。
でもカルサはくびをふって、「そうじゃない」っていうの。「わたしはちがう」って。
カルサはひかりじゃないの?じゃあひかりって、だれのこと?
ほんとうは、はなれたくなかったけど、カルサが「もういけ」っていうから、あるきはじめました。
なんどもふりかえりながらカルサをみたけれど、どうしても、いっしょにいくことはできないんだって。
それだけ、あるじってひとがだいじなんだろうな。どんなひと、なのかな?
でも、カルサがあんなにおもってるひとだから、カルサよりももっとやさしいひと、なんだね。あたしがめをあけたときには、カルサしかみえなかったけど、きっと、あそこにいるんだよね?
カルサはむずかしいことばかりいったけど、さむいからって、あたたかいふくをきせてくれました。あたしのかみのいろがみえないようにって、ぼうしもきせてくれました。
カルサは、やさしい。あたしのかみのいろ、こんなへんないろじゃなくて、カルサみたいにまっしろがよかったなぁ。
いっしょうけんめいあるいていくと、キラキラしてるまちがみえました。
そこにはたくさんのみずがありました。うみっていうんだって。
すごいなぁ、おおきいなぁっておもってたら、あたしとおなじ――カルサは『どうほう』っていってた――ひとたちが、へんなのりものにのってたから、あたしもそれにのったよ。
あたしはそのなかで、みつからないようにかくれていました。カルサが『かくれていけ』っていったから。でも、ちょっとだけたのしかったよ。
そののりものがとまって、みんながうごきはじめたから、あたしもそれにまぎれてあるいてついていきました。
どこへいくのかなぁ?
ころばないように、あしもとをみながらあるいていたら、めのまえになにかがみえてきました。
うわぁ、すごくたかいたてもの!なんだろう、あれ。
ぼーっとみてたら、いつのまにかみんないなくなっちゃった。
どうしよう。さっきからおなかもぐぅぐぅなってる。おなかへったなぁ。あのたかいたてものにいけば、なにかあるかな?
たてもののなかには、あたしとおなじひとたちがたくさんいてびっくりしました。
みんなたのしそうだったけど、あたしはなんとなくこわくなって、かくれました。おいしそうなにおいがしたところから、ときどきたべものをもらって。ごめんなさい、っておもいながら。
でもこのたてものは、おもしろい!いっぱいへやがあって、しらないものばかり。
まいにちすこしずつたんけんしてたら、きれいなえがかざられているへやがありました。すごくきれいっておもいながらみていたら、あかいいろがたくさんはいっているはこをみつけました。
そのいろがカルサとおなじいろだったから、すこしだけっておもって、そのはこをもってへやのすみにかくれました。ちょっとせまかったけど、ここならみつからないよね。
あかいあかいいろ。カルサのいろ。
きれい、だなぁ。
なんだか、ねむたくなってきちゃった。そういえば、さいきん、ねてなかった……な――
たくさんねたあとにめをさますと、めのまえにはうすむらさき。
――……きれい。
そのひとはすごくやさしいこえで、あたしにはなしかけてくれました。
「はぁい、小さなレィディ? 素敵な髪ね♪」
びっくりした。
だってあたしのかみをほめてくれるひとなんて、いままでいなかったから。すてきって、ほめことば、だよね?カルサにだって、そんなこといわれたことない。
しかもそのあと、そのひとはあたしになまえをつけてくれたの!
シリカ、だって!
うわぁ、うれしい!うれしい!!
そのひとは〝レピド〟っていいました。やさしいのはレピドだけじゃなくて、そこにいたひとたちみんなが、カルサみたいにやさしかったです。
あったかくて、きれいで、まるでひかってるみたい。これがカルサのいってた〝ひかり〟かもしれない。
――そうだといいな。
カルサのひかりと、あたしのひかりはちがうかもしれないけど。でも、いいや。
――これが、ここが、あたしの。
ねぇ、カルサ?
あたしも、ひかり、みつけたよ?
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