忍者ブログ

[PR]
Hide And Seek

管理人が飽きるまで赤毛を愛でるサイト

第五章 Gloom 11
Hide And Seek

管理人が飽きるまで赤毛を愛でるサイト

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

第五章 Gloom 11




泣かないで、悲しまないで。

もう、大丈夫だから。




 白い空間に泣き声が響く。
 小さくしゃくり続けるその光を人型は優しく撫でていた。

『……っひっく……うぇ……』
「怖かったんだね……」
『――っ、怖、かっ――』
「そっか……」

 人型の手が光を包む。

「――〝あの人〟は、居た?」
『ううん、見えな、かった』
「見えない?」
『うん。真っ暗、だった』
「……そう……」
『だから……怖くて――っ……』

 そう言って再び震えだす光を手でなだめながら、人型は考えを巡らせる。

『でも……〝声〟は、聞こえたよ?』
「――誰の声だった?」
『誰なのかは分からない……。暗かったし……』
「そっか……」

 なだめている手を止め、人型は光に問う。

「もう一度、外に出てみない?」
『――っやだ! もう、怖いのは嫌だよ!』

 人型は光を視線の高さまで抱え上げると、優しくこう言った。

「じゃあ、こうしよう?」
『――?』
「君が怖いと思うもの、君が悲しいと思うもの、君が辛いと思うもの、君が苦しいと思うもの。全部、全部〝俺〟が持って行ってあげるから」
『――え?』

 ぱちんと人型が指を鳴らすと、今まで抱えていた光がじわじわと人の形を取り始めた。

「だから、大丈夫。もう怖くないよ。君は安心して外に出れば良い」
『ちょっと待って! じゃあお前はどうするんだ?』

 光は点滅を繰り返しながら、ここに残ると言う人型よりも若干小さな人型を模っていく。

「俺は、ここよりもずっとずっと奥深く。君の〝想い〟が癒えるまで、そこにいる」
『駄目だよそんなの! 一緒に――!』

 朧気だった輪郭がはっきりしていくと共に、光から人型になりつつあるものはふわふわと上へ浮上していく。
 それに気付いた光が慌てて下に手を伸ばすが、届かない。

――見上げる人型。
――見下ろす人型。

『――っ、何で!!』
「君の〝傷〟が癒えるまで、そこで待ってるから」
『嫌だっ! お前も――!』

 人型との距離が離されていく。

「だから、――……と一緒に……迎えに来てね」
『だ、誰――っ? 聞こえないよ! 待って! ねえ!』

 しかし段々とお互いの姿が見えなくなっていく。
 それとは逆に、光の輪郭は明確になっていった。

――上昇を続ける人型は女性に。
――下降をし始めた人型は男性に。

「ずっと、待ってるから――――――〝ルキア〟」
『待って!!』

 白い空間が光に飲み込まれ、またあの鈴の音が辺りに響いていく。

――リィン……――

〝ルキア〟と呼ばれた人型が下へと伸ばした手は、無常にも空を掻いた。

『――〝ルーク〟――!!』

――たった独りで行かないで。
 そう叫ぶルキアが見たのは、今にも泣きそうな――ルークの笑顔だった。



第五章 Gloom 10≪          ≫第五章 Gloom 12

PR

Comment

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード

プラグイン

プロフィール

HN:
ちおり
性別:
女性
自己紹介:
赤毛2人に愛を注ぐ日々。